U-35展の展示関する追加メモ

「工作」あるいは”わざわざ“と読んでみる「技術」  佐藤研吾

展示しているモノについてのメモ

 

インドのベンガル地方の二つのプロジェクトを展示。

日本文学、特に宮沢賢治を研究するインドの施主による、一つは住宅の新築計画、もう一つは別の住宅の中に本の書架を作る計画。

自分は、最近は日本の福島にいて、年に数回インドへ行く生活をしているが、日本で設計をしてインドで建てるという時に、「設計」と「施工」の距離はさらに遠ざかりかねない。その距離感をどう調整するか、近づけるかが重要な動機となった。

方策として、建築の部品生産を設計の中に組み入れることはできないかと考えた。イメージと生の物質をなるべく近い距離に置くために、設計者が建築の一部の部品を制作して、現場に持っていき、支給する、という形を考え、

まず鋳造の制作拠点を福島に作り、部品作りと建築の設計を同時に進めている。

コルカタの住宅のプランニングは現地のアーキテクトと共同で行っている。この住宅はインド風水に基づいて各部屋の配置が決められているが、そのなかで中庭のアイデアが採用された。

とはいえ、この模型のような全体像を描く前に、まず炉を作り、鋳造実験と部品の形のアイデアから始めた。

 

例えば中庭に壁面のデザインを考える際に、まずその壁面にどのような窓が取り付くかを考え、いくつか連続する横軸の回転窓(ジャロジーのような)を想定し、回転窓を開けたままにしておくための留め具を考えた。また、部品を作るということはつまり、現場に持ち込んだ際の現場部材との取り合いを考えることでもある。ここでは、鉄部材への溶接接合と、ハンドルとなる木材を叩き込むことで組む形を想定している。

そしてそのあと、そうした回転窓を壁のどの場所に配置するかを考え、展開図を作成した。

中庭を囲むメインのフレームは、50mm角の角パイプを想定している。

現地には住宅の窓や外構に取り付けるオーダメイドで受注する溶接の職人さんがどの町にもいるので、彼らの技術を使おうとしている。

 

シャンティニケタンの書架も同様に、部材の接合から考えている。この書架は、施主の自宅に付帯するゲストハウスの中に置かれる予定で、そうした訪れた人が簡易に滞留するための小さな読書スペースなど備えるように、小さなカウンターテーブルの形を考えた。そしてそのテーブルが取り付くための木支柱を考え、納まりを検討。そしてさらに木支柱を支え、ほか部材と接合するための接合金物の形を考えた。棚板を支える構造は、25mmの角棒のフレームをロの字型に回すプランを考えている。そして補助部材として外周部に先ほどの75mm角の木の架構を回している。

 

福島の鋳造拠点はもちろん今回のプロジェクトに限るものではない。そして拠点整備のために、まず「荒れ地のなかスタジオ」という建築学校の設立から始めた。

そこには、学校という場が、今後重要な共同体としてのあり方(ニュー・コミュニティ)を作り出すのではないかの直観がある。

また結果的に、1世紀前の宮沢賢治の農民芸術の学校と、インドのタゴールがシャンティニケタンに作った森の学校という、二つの異なる文脈を繋げる役割も果たしうるモノとなった。

 

福島で行なっている鋳造の方法は、インド、ネパールで行われている方法を学んできてやっている。蜜蝋で原型を作り、粘土で覆い、乾いたあと熱して蜜蝋を溶かし出し、出来た空洞に金属を流し込むというもの。なので、現場へ支給する部品を全て福島で作ることは想定しておらず、いくつかの試作とアイデアを現地へ持っていき、現地の鋳物工場で生産することも想定している。

いわゆる素朴な技術は、そうした汎地域性、汎時代性を持っていると考えている。そうした技術はいわゆる”先端”技術によって淘汰されつつあるが、素朴さゆえに、いつどこでも再現が可能であるのではないか。

そんな技術に関する別の見方を、この展示のタイトル、「工作」あるいは”わざわざ“と読んでみる「技術」、という言葉から提示しようとしている。

 

(2019年10月18日 追加)


Under 35 Architects exhibition 2019
35歳以下の若手建築家による建築の展覧会(2019)
【会  期】
2019年10月18日(金)~28日(月) 12:00~20:00 ※最終日は18:00閉館
【展覧会場】
大阪駅・中央北口前 うめきたシップホール(〒530-0011大阪市北区大深町4-1うめきた広場)
https://u35.aaf.ac/