KOROGARO / kengo sato / 佐藤 研吾

2015年11月20日、

2015年11月20日、演劇集団アクト青山による「シッカロール」の上演を観た。場所は東京・烏山の住宅地の中にある真っ黒な家の中である。黒い塀に囲まれ、周囲に松が生い茂るその黒家は外観は武家屋敷のようでもあり、室内は軽井沢の別荘の如き開放感ある木の空間であった。おそらくは元は住宅であったのを少しばかり手を入れて劇場を演出したのだろう。私が受付をすませ中へ入るとすでに室内の壁沿いには幾人かのお客が座って開演を待っている。演劇の舞台となるであろう部屋の真ん中を通り抜けて私も席に着いた。いやはやおそらくもうそれがこの演劇を観るのに決定的であった。私はその時劇場の舞台に間違いなく立ったのである。古典的劇場にあるような上幕は無い。劇が始まり、役者がソロソロと暗闇の舞台に集まってくる。とある山荘での3日間の偶然極まる、非日常の中の日常とも言えよう物語を演者たちはキビキビと演じた。演者と私との距離は1メートルもない。演者と目が合うことはないが、演者の迫真の生身に私は思わず目をそらしそうにもなる。演者の躍動とともに、粉塵の如き舞台の中の空気として私自身が存在していることを強く感じた。ただし、それでも粉塵程度にはその部屋に居るのだというある種の没入感もまた感じられたのであった。
いわゆる劇場形式ではないオルタナティブな小演劇はこれまでもいくつか観たことがある。けれどもアクト青山は、演者それぞれのその緻密な空間把握と音の通り方までも含めた遠近感と奥行きのある劇場空間の活用、そしてそれら細部の前提を作り出す古典的良心を持った演出の明快さと戯曲のスピード感によって、小劇のスケールを大きく逸脱した広がりを感じたのである。その住宅劇場において毎日稽古し、また幾たびもの公演を重ねてきた劇団の蓄積あってのものでもあろうか。小空間というものを考えるにこれ以上の題材はないというほどに勉強させてもらった。
次回以降もできるかぎり足を運びたいと思う。