KOROGARO / kengo sato / 佐藤 研吾

音1

私個人としてもこのレビューの場をお借りして、建築と音、空間・場所と音楽の関わり、つまりはイワユル環境、もしくは「雰囲気」について考えをめぐらせてみたいと思う。
話は日本でのことだが、先日の秋頃、茨城は五浦海岸の、日本の美術の先進者・岡倉天心の「日本美術院」跡を訪れた。日本美術の方向性に関して東京芸術大学と意見を違わせ、職を辞した後に自らの理想を追い求めるべく、太平洋の高波が岩壁に打ちつけるその五浦の地へ拠点を移したのである。その岩壁の上に、岡倉天心は小さな六角堂を建て、余生の多くの時間をその小堂の中で過したと言う。その六角堂は観瀾亭(かんらんてい)と呼ばれ、東側に臨める太平洋の波を見、その音を聴くための瞑想の居処としてあった。実際にその地を訪れてみると、太平洋がその小堂に迫るように取り囲み、ザアザアと大波の音が絶えず聴こえる。
そして日が暮れ辺りが暗くなると、太平洋は真っ暗で何も見えない。けれども波の音だけは昼間と全く変わらずにその場所に在り、闇の中を支配した。
音は我々の全身を覆い包む、と闇の中でようやく沁み入るように痛感する。背を向けようが、耳を塞ごうが、音の波動は身体を震わせ我々は知覚するのかと思い知らされた。眼で視えている物体と自分自身の身体が粒子として在ると同時に、空気という物質を感じざるを得ない瞬間であった。
私は未だサウンドスケープの感触が掴めずにいる。けれども素朴なことなのだろうということは分かった。小野寺さんのHPがクリティカル・パスという名前であるから、バッキーフラーの如くの原理的探求の場であるのだということは分かった。

 

151203