KOROGARO / kengo sato / 佐藤 研吾

170113-2Vadodara

170113-2
午後、Sapan氏とバローダ市内に課題の敷地候補となる幾つかの寺を視察しに行く。
RADHAVALLABH MANDIR。去年のワークショップでも敷地の候補になった場所である。横にかつてはマハラジャの宮殿があった巨大な空地があり、そこには近い将来大きなショッピングモールができるらしい。コートヤードを持つ寺院で半壊しているが二人の夫婦の僧侶が住んでいる。
隣の古い民家に入れてもらう。おそらくは寺院の建設と同時期にできているだろう木造の長屋。道に面するバルコニーの手すりや破風には細かな装飾が未だ残されている。一階は金物屋が入っていて、二、三階には一つの家族がすんでいた。その家族の一人である少女が内部を案内してくれた。間口3m弱の家の中には二経路の階段が並んでいる。構成は複雑で、特に一階は大通り側は金物屋だが、奥は壁で仕切られていて上階に住む家族の家の神様が祀られていた。小さな古箪笥のような観音扉の容れ物に入って奥に鎮座していた。その部屋から裏通りに抜ける出入り口があり、日本でいう会所地と呼ぶべき小さな共用中庭にでる。中庭の一角には小さなヒンドゥーの神さまが祀られている祠があった。少女も毎日この祠にお祈りをしているという。祠の中の床には中央にリンガが鎮座し、水が二方向から流れるように溝が掘られ、その先の小さな穴にはネズミが隠れていた。お供え物を待っているのだろう。
続いてその裏の中庭沿いの別の寺院を見つけたので、その隣の民家に入れてもらう。少女の友達が住んでいるらしい。その友達の家は二階の一部が壊れ、ちょうどテラスのようになっている。先ほどの巨大な空地を見渡すことができてとても開放的である。まるで彼らが望んだかのように建物が壊れそこで住み暮らしている光景は、建築が人間の生活の容器であるというよりもその辺に生えているボウボウの雑草のように踏みなさられて育っていくような、建築物のスケールをゆうに超えた広大な大地の小さな振る舞いとして感じられるのである。

大通りに戻って、向かいの並びの一角に位置するVITHHAL MANDIRを訪れる。旧市街の中心にあるMANDVI GATEの交差点からすぐ近くの場所だが、10mくらいの通路を抜けて内部に入ったところにあるその寺院はとても静かな場所であった。中庭には大木が生い茂り、その木陰で僧侶のおばあさんが椅子に座って書物をしている。おそらくは写経のようなものを何度も書いていた。中庭の庭園はイギリス庭園の影響もうかがえる。奥では男の僧侶が腰掛けている。ダルダルのトレーナーを着ていて、私の訪問を訝しんでいる。インドの街を歩いていると街にいるほとんどすべての人と目があう。こっちが車に乗っていようが向こうが車に乗っていようが皆が私を目撃する。自意識過剰だろうと言われるやもしれないが本当にそうなのである。明らかに異質のモノとして目の中に入ってきてしまうのであろう。
続いてNarsinghji Mandirへ。市街地の細道を抜けてある寺院で横には数多くの蝋燭用のポシェが組み込まれた塔が建っている。(-用のポシェとはある意味語義矛盾である。そもそもポシェの可能性にはものすごく惹かれている。コルビュジェのロンシャンの教会の壁の中のトイレとかもその一つであろう。)建物に入ると二つの小さな中庭がズラして並んだ複雑な平面構成である。本尊はそのコートヤードを越えて、向かいの窓越しに道の外を覗いている。木造の建築であるがコートヤードから上空を眺めるとどうやら3階部分はコンクリートでできている増築であるらしい。よく見ると主要な部分は地上階もコンクリートの柱がたてられ木の板が丁寧に巻かれていることが分かる。正面は破風の装飾と格子窓(ジャリ)のバランスが良く、街路にひっそりと佇む感じである。良いスケール感だった。寺の裏側にある住居地域へ入り込む。井戸と洗濯場でひしめく小さな中庭があった。一角で何やらトントンと金物を叩いている人がいる。三人くらいでその一人の作業を見つめている。小さな神棚を合板にアルミを巻いて作っていた。その小さな作業場の床にはレールが二本埋め込まれ、それをうまく使ってアルミ板を成形している。
次に、少し離れたSWAMINARAYAN MANDIRへ。大きな敷地を持ち、中央に本堂が、背後には男性用と女性用それぞれの僧侶の滞在施設が。正面には短期滞在のための宿舎と警察が常駐するための建物で囲まれている。聞けばこのヒンドゥー教の寺院のすぐ横にイスラム系のコロニーがあるそうで、しばしば争いがあるのだという。横には10頭ほどの牛の牛舎がある。牛は神聖な動物として大事にされているだけではなく、その寺院で生活する人がミルクを確保するための貴重な食料を提供する。路上を闊歩する牛たちはよく見ると現在は大部分がナンバリングされている。おそらくは行政的管理によるものだろうが、彼ら牛たちがいつもどんな暮らしをしているのかには結構興味がある。街角にはしばしば牛達にあげる人々の残飯を置くスペースがある。牛にも当然縄張りがあると思うので、行政にナンバリングされている類とは全く別種の生活システムが彼らにはあるはずなのである。
最後夕暮れになって、さらに奥にあるMAIRAL’S GHUNTIRAJ GANPATI TEMPLEを訪れた。低く落ち込んだ庭園に礼拝所が横面し、夕暮れもあってその内部にはとても澄んだ暗がりがあった。一人の老僧侶が何やら経をとなえながら柱に打ち付けてある神様が描かれた紙を貼り直している。中庭の光を背負った老僧侶の痩せた首筋の輪郭が美しかった。こんな美しい線(図形的な意味ではない)をどこかに描くことができれば、この課題「New Temple」は成功である。素直にそう思った。

VDAに帰還し、2月いっぱいまでのスケジュールを練る。予定よりもすこし延ばして、3月3日に日本に帰国ということになった。一ヶ月半の短い課題である。
間にシャンティニケタンに行って3月のワークショップの準備と、リシケシュに行って真木テキスタイルの新工房(スタジオムンバイ設計)を見学に行く予定である。

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